泉入寺せんにゅうじ

泉入寺は、臼杵市末広にある戦国期に活躍した大友氏の武士が建てたと伝わる寺院です。堂内に建つ観音堂と九重塔にまつわる物語は今でもこの末広の地に語り継がれています。

泉入寺 堂内
最終更新日:2022年8月15日
泉入寺へのアクセスと基本情報

JR日豊本線 熊崎駅から改札を抜けて、線路をまたいでひたすら西の方角へ進みます。民家を抜けて途中末広川を渡り、臼杵福寿園からさらに100mほど行った場所に観音堂と石造九重の塔が建っています。徒歩約20分。

基本情報

住所 〒875-0053 大分県臼杵市大字末広下の2
電話 なし
拝観時間 特に記載なし
拝観料 拝観自由
本尊 十一面観世音菩薩
創建 1531(享禄4年)
開山 竹尾外記介
宗派/山号・寺号 高野山真言宗 山号は武生山
泉入寺の由緒

観音堂は正式には「竹尾山泉入寺」と呼ばれています、創建したのは大友氏の家臣だった竹尾外記介(たけおがいきのすけ)という戦国時代の武士です。

泉入寺 観音堂扁額

戦国時代の九州地域は、今の大分県以外でも熊本県や福岡県・佐賀県の大部分を大友氏が治めており、それぞれ各地域に家臣を置いていました。

大友氏の家臣で臼杵鑑親うすきあきちかは筑前(福岡県)に派遣され柑子岳こうしだけにある柑子岳城の敷地内で起こる反乱の鎮圧に手を焼いていました。

1509(永正6年)に、筑後の星野伯耆守ほしのほうきのかみが大友氏に叛いたため、討伐の兵を送ったところ逆に大敗してしまいます。

思案の末、はかりごとで星野氏を倒すことになり、そのために白羽の矢が立ったのが善徳寺住職の子だった竹尾外記介でした。

外記介は表向きは「大友家に仕えていたが、自分の上司と反りがあわず離れて星野家の家臣になることにした」と言いふらしてうまく星野氏の懐に入り込もうとします。

すっかり外記介を信じ込んだ星野伯耆守は、入浴中を外記介に襲われあっけなく殺害されてしまいます。

しかし外記介は逃げる途中で追手に捕まり、牢に入れられてしまいます。牢の中で信仰していた竹尾観音に祈りをささげたところ、運よく牢から脱出するこに成功したのです。

泉入寺 堂内全体構図

筑後川に差し掛かったとき道に迷っていると、白い犬と白さぎが道案役を務め、無事に古里末広にもどることができます。早速、臼杵鑑親とさらに大友義鑑にも報告しました。

働きを評価された外記介は多くの褒美をもらい、さらには「竹尾」の名を「武生(たきゅう)」と改め、武生外記介と名乗るようになります。久しぶりに故郷に戻った外記介は、仏の恩に報いるためお堂を建て観世音菩薩二体をお迎えしました

さらに筑後川で道に迷った際に助けてもらった白い犬と白さぎの霊を祀るために、2基の九重の石塔を建てました

その後、江戸期に発生した寛永の大洪水で観音菩薩と九重の塔は流されてしまいます。観音菩薩は津久見の観音崎で見つかったとの言い伝えがあります。また九重石塔は一基だけ復元され、末広泉入寺の堂内に残されています。

泉入寺 堂内

1621年(元和7)に臼杵2代藩主 稲葉典通公により観音像1体を末広から海添の山腹に移し般若院を開山。泉入寺と号します。

海添にある泉入寺 観音堂
臼杵市海添に移された泉入寺
泉入寺の見どころ

JR日豊本線 熊崎駅から歩き住宅街を抜けると、途中で末広川に突き当たります。周囲は四季折々の自然が見せるのどかな田園風景が広がります。

末広川と周辺の様子

臼杵市下末広の地は、善法寺村と呼ばれ江戸時代に二王座に移される前の善法寺が建てられていた場所です。(現在建てられている善徳寺とは別寺院)

下末広の善法寺村

末広川を渡り、臼杵福寿園の脇道を入り5分ほど畦道を歩いていると小さなお堂と石塔が見えてきます。

泉入寺 入口

堂内右手に建つ入母屋造りのお堂が観音堂です。

泉入寺 観音堂

現地案内板によると、観音堂は1724(享保8)年に戸次の大工、阿部八郎工門が造り、彫刻は西村助左エ門光忠によるものだそうです。梁や蟇股の装飾が鮮やかな若竹色になっているのがユニークです。

泉入寺 観音堂建築様式

観音堂のすぐ脇には地蔵堂が建てられています。案内板には地域で会社を営む方々の寄進によって1980(昭和55)年に建てられたとあります。

泉入寺 地蔵堂

観音堂と向かい合って建つ仏塔が、臼杵市指定文化財の九重石塔です。凝灰岩でできており、高さは約6m。当時は2基建てられていたようですが、洪水で流され現在は1基のみ復元されています。

泉入寺 観音堂建築様式

堂内には六体の地蔵が彫られた六地蔵など、石塔や祠が点在しています。特に仏教界で生と死に関わる世界をあらわした「三界萬霊さんかいばんれい」と刻まれた石塔が多くみられます。

泉入寺 六地蔵

悠久の時が流れる古寺では、足を踏み入れたとたんに周囲の空気が変わり気が引き締まる思いを実感します。

忙しい日常を送っているとふと、そんな静謐な空間に身を置き己と向き合いたくなるのは自然なのかもしれません。

泉入寺は、特に多くの参詣者でにぎわうような寺院ではありませんが、いにしえ人が紡いできた祈りを今に伝える数少ない古寺の1つに間違いありません。

近くを訪れた折には、是非とも堂内に散在する遺構の1つ1つとの会話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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