二王座城下町街ブラ トップ画像

大分県臼杵市の丹生島にうじまに築かれた臼杵城から南西に位置する「二王座におうざ」地区は、江戸期の稲葉藩政時代に寺町と侍町に町割りが行われた場所です。

小高い丘は、かつて「原山」神ノ木原(こうのきばる)と呼ばれ、明治の「西南の役」では臼杵隊がいた臼杵城を薩軍が攻撃するために陣を構えていた場所だったともいわれています。

臼杵城址から望む原山方面

臼杵城址から望む原山方面

また「二王座」の由来は遷座せんざする前の「祇園宮ぎおんぐう(現臼杵八坂神社)」がこの場所に建てられ、付近には荘厳な仁王門が建てられていたことから付いたといわれています。

二王座の景観

切通しで有名な二王座の景観

今回は臼杵城下町のコアな部分である、迷路のように入り組んだ石畳の散歩道「二王座」周辺を歩くコースを紹介します。

距離 約2.0km
所用時間 約1~1.5時間
(※観光時間込み)
おススメ時期 通年
 
マップとルート概要

スタートは臼杵城址から南西に位置する辻ロータリーから歩き始めていきます。
黄色のウォーキングマークがスタートで赤のウォーキングマークがゴールです。

辻からスタートする街ブラ
 

スタートは臼杵駅から徒歩10分の距離にある、臼杵城跡(臼杵公園)の南西に位置する辻ロータリーが目印です。
※黄色のウォーキングマークがスタート地点、青のカメラマークは見どころ、紫の仏教マークは寺院

辻ロータリー
辻ロータリー

ロータリーの一角にはひっそりとたたずむ「辻井戸」があります。その名称は大友時代に辻井某という家臣が当時この地に住んでいたことに由来するとか。

辻井戸

臼杵にあった井戸の中でも特に大規模なもので、藩政時代には「最も重要な井戸」として後世住民の飲料水や醸造業で明治期まで使用されていました。

 

「辻井戸」から南側に通された小径こみちを入ると石畳の道が始まります。その少し先には多福寺のシンボル湾曲した石段が見えてきます。

多福寺の石段を望む  
映画のロケ地にもなった多福寺

多福寺たふくじは現在の法音寺が建つ場所に創建されますが、1631(寛永8)に城下町整備のため臼杵藩主3代稲葉一通公の奥方で徳雲院(細川ガラシャの娘)の旧宅(現在の場所)に移築し再建された禅寺です。

多福寺山門

2002(平成14)年9月公開の大林宣彦監督の映画「なごり雪」のロケ地にもなったことで知られています。

見どころの1つ、九州でも珍しいとされる「縦羽目板たてばめいたの袴腰の鐘楼」は龍原寺三重塔の設計者で臼杵の名匠、高橋団内たかはしだんない祖父(同高橋団内)の作といわれています。

多福寺 縦羽目板の袴腰の鐘楼

多福寺境内奥からは寺院の美しい七堂伽藍、その先には相対する臼杵城址を望むことができ臼杵寺町の風情を垣間見ることができます。

多福寺境内
   
蛤小路と石垣

多福寺から月桂寺を繋ぐ小径こみちは「蛤小路はまぐりこうじ」と呼ばれています。

蛤小路

その魅力は、2つの寺院の前に築かれた石垣です。

多福寺から最長9mの高さで58mに渡り月桂寺まで乱積みされた石垣の特徴は、途中で直線になり高くなるほど反り上がる「寺勾配てらこうばい」と呼ばれる美しい形になっています。

多福寺から月桂寺までの石垣

下から見上げるとご覧のとおり、石垣の高さで内部が全く見えず建物の屋根が少し見える程度です。

蛤小路の高い石垣を見上げる

多福寺、月桂寺の高い石垣は当時稲葉藩政時代に築かれた臨時の要塞としての機能も果たしたため、堅固に造られることが求められたようです。

また武家屋敷が建つ丘の上に建てられ城下町の「内」と「外」の境界の役割も果たしていたものと考えられています。

 
稲葉家菩提寺である月桂寺

臼杵城跡と相対するように建つ寺院は多福寺ともう一宇、臨済宗妙心寺派清光山月桂寺げっけいじがあります。

月桂寺

月桂寺

臼杵藩5万石の藩主稲葉氏歴代の菩提寺として、1608(慶長13)年に稲葉良通(一鉄)が開基、2代目藩主である稲葉典通が創建、湖南宗嶽和尚開山の禅寺です。

現在は拝観することはできませんが、山門のたたずまいと周囲を囲む石垣、塀を見ただけでも400年以上もの歴史の厚みを感じます。

「月桂寺」から一度市道へ出て南下。徒歩5分の「旧丸毛家住宅」を目指します。

 
武家屋敷を肌で感じる、旧丸毛家住宅

旧丸毛家住宅きゅうまるもけじゅうたく」は市内でも江戸期の面影を残す寄棟造桟瓦葺きの中級武家屋敷です。

丸毛家は稲葉藩政時代に200石を領した武家であり、屋敷には「表玄関」に「玄関床」を配すなど風情ある建物となっています。

旧丸毛家住宅 紅葉時期

1988(昭和63)臼杵市が買収し、1990(平成2)年に市の有形文化財として一般に公開されるようになりました。入場は無料です。

特徴として、接客空間と日常生活空間がしっかり区別されている点です。封建時代は身分格差が重んじられたため、住まいにも往時の様式を伺い知ることができます。

旧丸毛家住宅 居間

「下之間」と呼ばれる客間から望む竹林の美しい景観は、移り変わる四季に合わせて訪れてみたくなります。

旧丸毛家住宅下之間からの景色

「旧丸毛家住宅」でまったりしたら再び二王座原山方面へ戻り、「香林寺」を目指します。

 
本丁から原山まで通ずる新道

二王座を散策していると気づくと思いますが、迷路のように入り組んだ小径と共に多いのが「坂」です。

二王座の坂

この坂は1695(元禄8)年に本丁から原山まで通した道「新道」と呼ばれています。周囲は月桂寺の墓地が配され、少し傾斜のきつい坂道となっています。

坂道を少しのぼり、振り返ると左手に臼杵城址、正面に広がる紺碧の臼杵湾にはシルエットの美しい津久見島を望むことができます。

紺碧の臼杵湾とぽっかり浮かぶ津久見島

坂道を登りきった先には武家屋敷の風情が色濃く残る「今井邸」が現われます。この奥には1593(文禄2)年に御神体を移す前の祇園宮(臼杵八坂神社)の跡が残されています。

二王座の坂

今井邸(旧武家屋敷)
※この建物は外観のみの公開されています。

「今井邸」の先にある三叉路付近にはかつて春日局が1601~2(慶長6~7)の2年間滞在したと伝わる屋敷あり、現在も往時を偲ぶ井戸が残されています。

 
池泉式庭園が美しい香林寺

「今井邸」から10mほど進むと三叉路に突き当たりますので、右折していきます。

新道先の三叉路

坂を下ると右手にゆるやかな石段と趣のある薬医門が建つ場所は、富春山「香林寺こうりんじ」と呼ばれる禅寺です。

香林寺

香林寺山門

1649~50(慶安2~3)年の間に創建され、月桂寺開山湖南和尚の弟子で南叟禅師の開山と伝わります。以前は坂の上に建てられていましたが、1886(明治19)年に現在地に移されました。

二王座の町並みに溶け込み、侘びた雰囲気が奥ゆかしい寺院。境内には江戸中期に作られた池泉式庭園ちせんしきていえんがあり臼杵三名園の1つに数えられています。

香林寺

香林寺本堂

「香林寺」からゴールまで。コース途中にある見どころ「旧稲葉家長屋門」、「釘宮邸」、「旧伊吹家住宅」を一気に見てまわりましょう。

 
上級武家の遺構、旧稲葉家長屋門

香林寺を過ぎて分岐を左折、10mほど歩くと「二王座歴史の道」の中に重厚な造りの長屋門が残されています。

旧稲葉家長屋門

この長屋門は「稲葉土佐様一の槍」の家と呼ばれ稲葉家分家の稲葉甚兵衛の屋敷跡です。

長屋門とは両サイドに家臣が住める部屋を持つ門の様式ですが、臼杵藩では特に格式の高い重職の家来にしか建てることが許されていなかったようです。

旧稲葉家長屋門を過ぎると四叉路に突き当たります。左側の小径を進んでみましょう。

二王座歴史の道 四叉路
映画「なごり雪」と釘宮邸

坂道の途中には「釘宮邸(くぎみやてい)」と呼ばれる洋風の住居が現れます。

釘宮邸

緑の屋根が釘宮邸
※この建物は外観のみの公開されています。

内部はおしゃれな西洋風の建物が建てられており、ここは2002(平成14)年に公開された大林宣彦監督の映画「なごり雪」で「雪子の家」のモデルとなった建物です。

北側には高さ4mほどの石垣と白壁が築かれておりまさに和洋折衷、臼杵でいにしえの時代より紡がれる西洋文化の片鱗を垣間見ることができます。

釘宮邸

釘宮邸の石垣
※この建物は外観のみの公開されています。

坂を登りきると、左に「旧伊吹家住宅」と呼ばれる侍屋敷の薬医門が現われます。

旧伊吹家住宅

旧伊吹家住宅
※この建物は外観のみの公開されています。

母屋は江戸時代後期にあたる1790(寛政2)年に建築されたもので、市内に現存する侍屋敷の中で最も古いものです。

「旧伊吹家住宅」の前からは福良や塩田地域を望むことができ、ここからの城下町の景観も二王座散策の醍醐味となっています。

旧伊吹家住宅

塩田や福良方面その向こうの山々を一望

ゴール:二王座を代表する切通し

「旧伊吹家住宅」から坂を下ってくると、阿蘇溶結凝灰岩を掘削して通した道「切通し」がよくわかる場所に。太平洋戦争中に使用された防空壕跡も残されています。

旧伊吹家住宅

二王座地区の切通し

今回「二王座」のコアな地域である原山周辺をご紹介しましたが如何でしたでしょうか。

合理的であり機能性を重視した近代の町並みとは対照的に臼杵の町は、時代に取り残された異質な空間ともいえるでしょう。

キリシタン大名大友宗麟の町づくりから始まり、江戸時代260年間の稲葉藩政期に大きく発展した臼杵の城下町は、歴史的景観を損なうことなく過去の遺産として次世代へとつないでいるといっても過言ではありません。

そんな臼杵城下町をたまには街ブラしてゆっくりとした時間を過ごしてみるのも良いかもしれません。

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