日本伝統仏教13宗派とは?

観光でお寺をまわる際に、その寺院の宗派については皆さんそれほど気にしないことが多いと思います。せいぜい実家に帰った時にふと、うちのお寺の宗派は何だったかな?と思い出すくらいでしょうか。

日本に仏教が初めて伝来したのは飛鳥時代とされていますが、今も続くその日本の伝統仏教にはそれぞれ宗派があり、その開祖の考え方、その教えなどの特徴に違いがあります。

この記事では、日本伝統仏教の代表的な宗派とその特徴について、簡単ですが解説していきます。

日本仏教について
最終更新日:2020年12月21日
南都六宗(法相宗、華厳宗、律宗)

南都六宗なんとろくしゅうとは、奈良時代に平城京を中心に栄えた日本仏教の6つの宗派を指しています。三論宗さんろんしゅう成実宗じょうじつしゅう法相宗ほっそうしゅう倶舎宗くしゃしゅう華厳宗けごんしゅう律宗りっしゅうの宗派がありましたが、現在では法相宗、華厳宗、律宗が残っています。

法相宗ほっそうしゅう

中国の小説、西遊記で知られる玄奘三蔵げんじょうさんぞうの弟子にあたる慈恩大師じおんだいし窺基きき)を開祖として、日本に伝えたのは同じく玄奘に師事した道昭どうしょうという僧です。奈良県に建てられているお寺で興福寺や薬師寺で知られており、訪れた方も多いと思います。

華厳宗けごんしゅう

中国の杜順とじゅんを開祖として、日本にもたらしたのは、良弁ろうべんを宗祖としています。大乗仏教の中でも広範で哲学的な教学を持ち奈良の東大寺を本山としています。

律宗りっしゅう

中国の法聡ほうそうを開祖に、日本にもたらしたのは日本史の教科書でおなじみの鑑真がんじんを宗祖としています。6度の日本への渡航の末、両眼を失明してしまう話は一度は聞いたことがあると思います。奈良の唐招提寺を本山として、戒律(仏教での規律)の研究に重きを置く宗派です。

天台宗と真言宗

桓武天皇が平安京に遷都した平安時代の仏教の代表は天台宗と真言宗です。宗祖の最澄と空海は同じ時期に遣唐使として中国で仏教を学んで日本に持ち帰り、最澄は比叡山で空海は高野山でそれぞれ新しい仏教を開きます。

天台宗てんだいしゅう

平安時代に最澄さいちょうが中国の唐へ渡り、修行の後日本に戻って比叡山延暦寺を建て総合仏教・日本天台宗を興します。中国の学んだ教えをそのまま日本へ持ってくるのではなく、円、禅、密、戒を融合した新しい教え「法華経ほけきょう」の精神を統一します。また最澄は桓武天皇の信用を受けて、高僧として評価が高くこの時代に活躍します。

比叡山は後に、法然、親鸞、道元、栄西、日蓮など日本仏教における多くの宗祖がここで学んでおり「日本仏教の母山」とも呼ばれています。

真言宗しんごんしゅう

空海くうかいは四国の讃岐(香川県)の生まれで、最初は大学で儒教を学んだが仏教が優れていることに気づき大学を辞めて仏門に入ります。803年に遣唐使として入唐し、密教の僧侶である恵果けいかから学び、日本帰国後、高野山(和歌山県)で教えを広め真言宗を開きました。空海は唐で学んだ純密じゅんみつ(大日如来が直接説いた教え)を継承して「大日経」や「金剛頂経」などの経典で体系化した結果、当時最先端の密教の教えであったとされています。

さらに空海は日本初の庶民が通える学校、綜芸種智院しゅげいちいんの開設をはじめ讃岐の国の溜め池の修築に尽力します。また日本の三筆に数えられるほどの能書家でもあり、文才に優れていました。

死後、醍醐天皇より「弘法大師」の諡号おくりなが贈られます。そこから生まれた「弘法筆を選ばず」や「弘法も筆の誤り」などのことわざでも有名です。

臼杵市内の真言宗の寺院はこちら 興山寺
融通念仏宗、浄土宗、浄土真宗、時宗
龍原寺

平安時代末期から鎌倉時代にかけて仏教の変革が起きます。まず国家や貴族のための宗教だったものが、一変して、民衆救済のための宗教に重きを置かれるようになったことです。

代表的な仏教では浄土系(浄土教系)です。いずれも阿弥陀仏(阿弥陀如来)を本尊として、とにかく念仏をとなえるだけで良いとし「無量寿経むりょうじゅきょう」「観無量寿経かんむりょうじゅきょう」「阿弥陀経あみだきょう」の3経典である浄土三部経に基づいた仏教です。

融通念仏宗ゆうずうねんぶつしゅう

融通念仏宗は天台宗の比叡山で出家した僧侶である良忍りょうにんを開祖とします。良忍は独特の節回しをつけて念仏を唱える「声明しょうみょう」を習得。比叡山を下山した後、京都大原にて隠棲して集団で念仏を称える「融通念仏」以外に道はなしと阿弥陀如来の教えを広めていきます。

浄土宗じょうどしゅう

開祖の法然ほうねん美作国久米みまさかのくにくめ(岡山県)の豪族の家に生まれたが、父親が土地論争で殺害されると父の遺言を守って9歳で仏道に入ります。中国の浄土教の善導ぜんどうが著した、「観経疏かんぎょうしょ」を読んで開眼。「念仏を唱えれば、人は極楽往生が叶う」とする誰にでも実践できる専修念仏を提唱します。

浄土宗は現在4つの宗派、浄土宗(鎮西派ちんぜいは)、西山せいざん浄土宗、浄土宗西山深草派せいざんふかくさは、浄土宗西山禅林寺派せいざんぜんりんはに分かれ、全国の寺院数は合わせて約8千ほどで信者数は600万人以上を数えます。

臼杵市内の浄土宗の寺院はこちら

・浄土宗鎮西派

龍原寺

・浄土宗西山禅林寺派

大橋寺
浄土真宗じょうどしんしゅう

浄土宗の開祖である法然に師事し、師の教えをさらに推し進めたのが浄土真宗の開祖である親鸞しんらんです。

親鸞は比叡山での修行の後、法然門下になりましたが、後に鎌倉幕府による浄土宗への弾圧により越後(新潟県)に流されます。布教活動の中で念仏は自力だと考えて、阿弥陀如来の本願に全てをゆだねる「絶対他力」を教えの中心に据えます。

南無阿弥陀仏なむあみだぶつ」という念仏を唱えて、仏様を心から信じ、よりどころとします。

浄土真宗は十の宗派があり、その中でも二大宗派と言えるのが、浄土真真宗本願寺派(西本願寺)と真宗大谷派(東本願寺)です。浄土真宗は全国に2万以上の寺院数と1000万人以上の信者を数え、国内でも圧倒的な最大宗派となっています。

臼杵市内の浄土真宗の寺院はこちら

・浄土真宗本願寺派

光蓮寺 善正寺

・真宗大谷派

善法寺 善徳寺
時宗じしゅう

開祖の一遍いっぺんは、武家の家に生まれますが、無常を感じて仏門の道へ入ります。法然の高弟に学んだ後、「南無阿弥陀仏」と書かれた札を民衆に配りながら全国をまわり布教します。一遍のもとに多くの信者が集まり、時宗の礎を作りました。太鼓や鉦を打ち鳴らしながら念仏を唱える踊念仏おどりねんぶつを披露して布教を行ったことで知られています。

日蓮宗
日蓮宗にちれんしゅう

開祖の日蓮にちれんは千葉県で生まれ、清澄寺で出家します。比叡山をはじめ各寺院に学び、建長5(1253)年に「法華経ほけきょう」をよりどころとして日蓮宗を興します。「南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう」と題目を唱えれば理想の世界が訪れあらゆる人々が永遠に救われますとして積極的に布教に励みます。法華経を教えの中心に据えた日蓮は、他の宗派や当時の鎌倉幕府から迫害をうけて流罪にされた経験があります。

臼杵市内の日蓮宗の寺院はこちら 法音寺
臨済宗、曹洞宗、黄檗宗
坐禅

日本で「禅」を広めた3人の宗祖と宗派をご紹介します。禅宗はお釈迦様が菩提樹の下で「坐禅ざぜん」を組んで瞑想していたため、坐禅を修行の根本に据え「悟り」を目指している宗派です。

またアップルの創業者であるスティーブジョブズをはじめ、日本でも名だたる著名人が禅(ZEN)をライフスタイルに取り入れていることは時々話題になっています。

臨済宗りんざいしゅう

栄西えいさいは、平安末期に比叡山で天台宗を学んだ後、二度中国の南宋に入り臨済禅を学びます。日本帰国後に建久2(1191)年、臨済宗を興し京都の建仁寺を本山とします。他の仏教との摩擦を避けるために鎌倉幕府の庇護下に入り、北条政子が開基した鎌倉の寿福寺の初代住職になります。臨済宗は鎌倉時代から室町時代にかけて貴族を中心に公家文化として広まります。また中国の茶種を日本に持ち帰り紹介ことでも知られています。

臼杵市内の臨済宗の寺院はこちら 多福寺 福聚寺 見星寺
曹洞宗そうとうしゅう

開祖の道元どうげんは日本で天台宗と臨済宗を学び、中国の南宋に渡り曹洞禅を学びます。日本帰国後に曹洞宗を興し越前(福井県)の永平寺を建立します。曹洞宗は坐禅こそが仏の行いとだとして、ただひたすら坐禅を行う「黙照禅もくしょうぜん」を修行の根幹にしています。師の栄西とは違った政治権力と結びつくのを嫌う、武士を中心に質実剛健の武家文化に広まる宗風を確立します。

黄檗宗おうばくしゅう

開祖の隠元いんげんは明の時代の中国の僧。江戸時代の初めに日本へ渡り、徳川4代将軍家綱の援助によって現在の京都府宇治に黄檗山萬福寺を建立し日本黄檗宗を興します。阿弥陀信仰と融合した明時代の中国臨済宗の流れをくんでいます。植物のインゲン豆は隠元が日本へもたらしています。

日本仏教の13宗派まとめ

日本の伝統仏教は奥が深く、各宗派について知れば知るほど魅力に溢れていることが見てとれます。それでは今回のポイントをまとめました。

  • 平城京を中心に栄えた奈良仏教は南都六宗といい現在、法相宗、華厳宗、律宗が残っている。
  • 天台宗は平安時代に開祖である最澄が入唐した経験をもとに、円、禅、密、戒を融合した新しい教え法華経の精神を統一した教えである
  • 真言宗の開祖である空海は唐で学んだ純密(大日如来が直接説いた教え)を継承した当時最先端の密教の教えであった
  • 浄土系の開祖、法然は「念仏を唱えれば、人は極楽往生が叶う」とする誰にでも実践できる専修念仏を提唱した
  • 浄土真宗の開祖、親鸞は阿弥陀如来の本願に全てをゆだねる「絶対他力」の教えを中心に布教した。
  • 日蓮宗の日蓮は「南無妙法蓮華経」と題目を唱えれば理想の世界が訪れあらゆる人々が永遠に救われると説いた
  • 臨済宗の栄西は南宋で「禅」はお釈迦様の教え全てであるとして、日本に教えを広めた。
  • 曹洞宗の道元は坐禅こそが仏の行いとだとして、ただひたすら坐禅を行う「黙照禅」を修行の根幹に据えた

今回は日本に受け継がれる伝統仏教13宗派について、まとめてみました。

臼杵市内には城下町の骨格を形成する歴史的な寺院が30以上も建てられており、京都のような景観を見ることができます。また寺院の前には由緒書きが立てられていて、そのお寺の宗派や建立秘話などを読んで回ることができます。