何があるの?お寺の境内

臼杵川を挟んで望む大橋寺

霊場巡り、御朱印集め、季節の花々観賞、1人瞑想にふけるなど様々な目的でお寺へ訪れていることでしょう。

全国には宗教法人として登録のあるお寺が7万以上あるとされています。頻繁に参拝されている方なら気づくと思いますが、全国どこのお寺を訪ねても建物の名称や大まかな配置は共通していることが多いですよね。

山門さんもんをくぐれば、目の前には境内が広がっています。正面には本堂が建ちその両側には三重塔や観音堂、講堂や経蔵などの重要なお堂が並んでいます。

そして毎日定時になると僧侶が鐘楼しょうろうの中で鐘を撞きます。子供の頃はその鐘の音が聴こえたら家に帰る時間なんて経験もあるのではないでしょうか。

龍原寺山門

そんな身近に必ずあるお寺ですが、いつ頃から建てられるようになり、現在のような構成になったのでしょうか?

今回”うすきめぐり”では、今後もより寺院の参拝が楽しめるように、境内によくある建物の由来やその意味などを深堀りしてみたいと思います。

最終更新日:2022年7月25日
そもそもお寺とは何?

仏教の開祖である釈迦は悟りを開いた後、定住することなく弟子たちと共に各地を回って修行を積む遊行(ゆうぎょう)を行っていました。

ところが次第に在家(出家していない人)の信者が増えてくると、遊行することが難しくなります。在家の人たちは地元で仏教を教えてほしいと、僧たちに滞在場所を提供するようになります。

龍原寺境内

さらにインドでは毎年雨季があり、この時期は虫や草花が顔を出すため、踏みつけないよう出歩かずに洞窟や施設のような場所で修行を続けるようになりました。このことを安居あんご雨安居うあんごと呼ばれています。

このような経緯を経て次第に僧侶が定住するようになっていき、そしてその定住場所が現在の仏教施設であるお寺となっていきます。

七堂伽藍とは?

お寺にある建物の構成は宗派によっても異なりますが、奈良時代や飛鳥時代から七堂伽藍(しちどうがらん)が一般的とされています。

多福寺境内の伽藍

多福寺境内の伽藍

伽藍(がらん)」とは本来僧侶が住む場所を指していましたが、次第にその土地も含め仏像が安置される建物、塔などお寺を構成する建物の総称を指すようになりました。

「七堂(しちどう)」は、「仏塔ぶっとう」、「本堂(金堂こんどう)」、「講堂」、「僧坊」、「経蔵」、「鐘楼しょうろう」、「食堂じきどう」のお寺を構成する基本的な7つの建物を指しています。

このほかにも「門」や「庭園」、宗派により「観音堂」、「大日堂」、「太子堂」などが建つなど重要な建物は決して7つとは限りません。

下の図は一般的な七堂伽藍が配置された一例です。

七堂伽藍とは?

七堂伽藍を構成する建物と役割

仏塔仏舎利(釈迦の遺骨)を納める塔
本堂(金堂)お寺の中心となる殿堂で、本尊が安置される建物。
講堂経典を教義したり、説法したりする建物
僧房僧侶が寝起きし生活するお寺の中の宿所
経蔵経典を納めておく蔵
鐘楼時を告げる梵鐘のある建物
食堂僧侶が食事をする建物

それぞれの役割をもう少し詳しく解説していきます。

仏塔

龍原寺三重塔

仏塔(ぶっとう)は仏教の歴史の中でも特に重要な建物とされています。それは今から2500年前のインドで釈迦が亡くなると、仏舎利ぶっしゃり(遺骨)を分けて納め崇拝の対象としたことに由来します。

紀元前3世紀にインドを統一したアショーカ王は仏教を厚く保護し仏舎利を納めた仏塔(ストゥーパ)を84000基建てたといわれています。その後、仏教が世界に広まったことで仏塔を建てる風習も広まり各地で仏舎利を祀るようになりました。

日本でも仏教が大陸から入ってくると、仏塔として木造の三重塔や五重塔や多宝塔が建てられるようになりました。日本で最も古い仏塔は今から約1300年前に建てられた聖徳太子ゆかりの寺院、法隆寺にある五重塔であることはみなさんもご存知かと思います。

大地震が来ても倒れない日本の多重塔建築の心柱(しんばしら)や四天柱(してんばしら)は世界に誇る技術で、現代の超高層ビルや東京スカイツリーにも応用されています。これらの技術は仏教発祥のインドや中国の仏塔にもありません。

奈良や京都では良く見かける三重塔や五重塔ですが、九州地方では木造三重塔は実は3基しか現存していません。そのうち1基が臼杵の龍原寺に建てられている三重塔(県指定文化財)となっています。

また墓石としてよく見かける五輪塔も、仏塔(ストゥーパ)が元になったものです。五輪塔をさらに簡略化させたものがお墓によく置かれている木製の長板に戒名が書かれた卒塔婆そとば板塔婆いたとうば)です。

卒塔婆

本堂(金堂)
本堂外観

多福寺本堂外観

お寺のご本尊である仏像を祀る建物は、本堂(ほんどう)または金堂(こんどう)と呼ばれています。

本堂は境内の中心に位置していることが多く、入母屋造の屋根で威風堂々とした風格をまとい、名僧や著名人の筆によって書かれた扁額(へんがく)が掛けられています。

全国のお寺の中には本堂の中まで入れていただき、礼拝できるお寺も少なくありません。

本堂の中へ入って礼拝した方はお分かりかと思いますが、本堂の中は大きく外陣(げじん)内陣(ないじん)とに分かれています。

本堂の中の外陣と内陣

本堂の中の外陣と内陣(大橋寺)

内陣には須弥壇(しゅみだん)と呼ばれるご本尊が安置される一段高く設けられた場所があります。須弥壇とは仏教世界の中心にそびえる山、須弥山(しゅみせん)を模したものとされています。

本堂内部外陣と内陣の構成例

内陣は清浄な区域であり、在家の信者は立ち入り不可となるため、一般的には外陣(礼堂)の礼拝スペースで行えるようになっていることが多いと思います。

また内陣の両サイドにある脇間の上部には、匠の技による繊細な彫刻が施されています。このような美術的観点からも本堂の内部は魅力に富んでいることでしょう。

鐘楼

「除夜の鐘」でおなじみのお寺の鐘楼(しょうろう)です。正岡子規まさおかしきの「柿くえば鐘が鳴くなり法隆寺」など、お寺の鐘を題材にした短歌や俳句も数多く残されています。

鐘楼

鐘楼(福聚寺)

お寺にある鐘は「梵鐘(ぼんしょう)」ともいい「梵」という字はサンスクリット語で「神聖」や「清浄」を音訳したものだそうです。

仏教発祥の地インドの寺院には鐘はなく、日本では奈良時代に中国から伝わった「和鐘(日本鐘)」が作られるようになります。梵鐘の音には「煩悩」を取り除き、悟りに至る功徳があるとも言われています。

実際の用途においては時刻を知らせる行事の開始や終了の合図として鐘を使用します。高い位置に鐘が吊るしてあるのはより遠くへ音が響くようにするためとか。

鐘楼の建築様式も様々で、入母屋造の屋根がついている鐘楼が多いですが中には下の写真にあるように袴腰(下層が末広がりになっている)になっているユニークな鐘楼などもあります。

袴腰の鐘楼

袴腰の鐘楼(多福寺)

鐘楼と山門が一緒になった鐘楼門も、全国各地の寺院で拝見できます。

お寺に建てられている門は、山門(さんもん)または三門(さんもん)とも呼ばれています。山門をくぐるとどことなく静謐な空気が漂い、お寺の境内に足を踏み入れた感覚を実感しませんか?

薬医門(光蓮寺)

薬医門(光蓮寺)

お寺の山門はただ入口として建てられているのではなく、俗世間との結界の役割を担っています。

山門と呼ばれる名称について、お寺は○○山などの山号を持つように本来、山に建てられていることから来ています。また空、無相、無作を「三解脱門(さんげだつもん)」と呼びこれを略して三門とも表現されています。

山門には様々な様式があり、壮麗な二天門には仏教を守る神々として左右に四天王(持国天、増長天、広目天、毘沙門天)のうち2体の像が安置されます。

唐破風屋根の仁王門

緩やかなカーブを描く唐破風屋根の二天門(法音寺)

2階建ての門は二重門とも呼ばれ、鎌倉にある建長寺が有名です。また鐘楼を2階部分に乗せた鐘楼門などもあり、バリエーションも様々です。

袴腰の鐘楼

2階部分に鐘楼が設置される鐘楼門(星見寺)

その他の仏堂
多福寺の観音堂

観音堂(多福寺)

お寺には本尊が安置される本堂以外にも複数のお堂が建てられています。宗派によっても変わってきますが、基本的には安置される仏によって仏堂の名称も変わってきます。

訪れた先のお寺では七堂伽藍以外にも「釈迦堂」、「薬師堂」、「阿弥陀堂」、「観音堂」、「大日堂」、「太子堂」など様々なお堂が建てられていることでしょう。

まとめ

今回お寺の境内に建てられている建物について、解説してみましたがいかがでしたでしょうか。

お寺の楽しみ方は人によってそれぞれですが、今回紹介したようにちょっとした知識があると、より興味をもって参拝を楽しめるのではないでしょうか。

今回の要点をまとめてみました。

  • 仏教の僧侶はもともと各地を回って修行を行っていたが、在家信者の増加や雨季の時期を避けるなどの理由で一カ所に留まって修行を行うようになった
  • お寺にある建物の構成は仏塔、本堂(金堂)、講堂、僧坊、経蔵、鐘楼、食堂の七堂伽藍が基本となる
  • 仏塔(ストゥーパ)は釈迦の遺骨を納めた仏舎利として重要な建物である
  • 日本でも仏教が大陸から入ってくると、仏塔として木造の三重塔や五重塔や多宝塔が建てられるようになった
  • 五輪塔も、仏塔が元になったもので五輪塔をさらに簡略化したものが卒塔婆(板塔婆)である
  • お寺のご本尊である仏像を祀る建物は、本堂(ほんどう)または金堂(こんどう)と呼ばれている
  • 本堂の中は大きく外陣(げじん)と内陣(ないじん)とに分かれている
  • 内陣には須弥壇(しゅみだん)と呼ばれるご本尊が安置される一段高く設けられた場所がある
  • 内陣は立ち入り禁止、在家の信者は外陣に設けられた礼拝スペースで行うことになる
  • 鐘楼は時刻を知らせる、行事の開始や終了の合図などの用途で鐘が撞かれる
  • 山門はただ入口として建てられているのではなく、俗世間との結界の役割もある
  • 七堂伽藍以外にも「釈迦堂」、「薬師堂」、「阿弥陀堂」、「観音堂」、「大日堂」、「太子堂」など様々なお堂が建てられている